遅過ぎた「初勝利」
日曜日、仕事場で倒れてしまった。それまでなんでもなかったのに急にめまいを覚え、ついに立ってられなくなってしまい、生まれて初めて担架で運ばれるという経験もした。以来、今日まで実家で休養させてもらっている。明日からはなんとか出勤するつもりだが、もう若くないのだと改めて実感せざるを得ない経験であった。
さて、話は替わるが、昨日、なんとも情けないというか、寂しい将棋対局があった。カ-ドそのものは黄金カ-ドと言っていい。昨年18世名人の資格を得た森内俊之名人と同じく昨秋に16世名人を名乗ることになった中原誠のまさに「永世名人対決」である。なにが寂しかったのかと言えば、その対局の行われた状況である。それが「竜王戦5位決定戦1回戦」だったからだ。
5位決定戦といってもその有態は「敗者復活戦」に過ぎない。ここで竜王戦のシステムを詳しく説明するのは避けるが、全棋士が6つのクラスに分かれて渡辺明竜王への挑戦権を競うのが竜王戦、中原も森内もその中の最上位クラス1組に所属しているのはさすがとは言えるものの、共に1回戦に敗れ、裏街道ともいうべき本戦出場者決定戦に回らざるを得なくなった。永世名人対決のシチュエ-ションとしては寂しいというしかない。
長らく永世十段を名乗ってきた中原が還暦を機に名誉王座、更には栄光の16世名人をも合わせて名乗るようになって半年ほど、筆者の危惧通りその戦歴は情けないの一言。ひたすら黒星が並べ続けて来た。自他とも認める苦手郷田真隆九段と立て続けに3つ当たってことごとく、粉砕された「不運」もあるにしても、なんとかするのが永世名人ではないか。他にもCクラス棋士や七段棋士あたりにもひねられて、永世名人襲名後、未だ未勝利の体たらくでは木村義雄、大山康晴という偉大な先人が泣こうというものだ。そんな状況でこの程残る「永世棋聖」「永世王位」も名乗ることになったというニュ-スも伝わって来るに及んで、もうヤケッパチになっているじゃないかと心配になってくる。
一方の森内も元気がない。郷田を破って永世名人の資格を得て約1年、しかしその戦歴はお世辞にもパッとしているとは言えない。名人戦以降の6つのタイトルの挑戦者に名乗りを上げることもなく、逆に早々に敗退するケ-スが目立った。竜王戦1回戦も失礼ながら松尾歩七段辺りに負けてるようでは・・・今期勝率.533というのも現名人としてはやはり寂しい。
そんな2人の対局は記憶に間違いなければ、5年前の竜王戦挑戦者決定戦3番勝負以来のはずである。あの時は、当時竜王位を羽生善治が持っており、ついに羽生-中原のタイトル戦実現かと大いに盛りあがったが、そんな世論の風に屈せずに森内が堂々と勝ちきり、その勢いで羽生から立て続けにタイトルを奪って行くことになった。その時とは対照的にひっそりと(?)行われた昨日の対局は16世名人が後手番ながら現名人を破ってやっと遅まきながら永世名人襲位後、初勝利を挙げた。将棋の内容はまだ伝わってきてないが、事前の大方の予想はやはり森内乗りだったはずだから、やはり意外な結末であろう。今の中原に多くを期待するのは、酷とはわかってはいるのだが、永世名人を名乗って戦っている以上、その肩書きにふさわしい戦い方をする責任はあると思う。
そして森内の元気のなさは心配だ。対局前、そろそろ中原の勝ち頃じゃないかと筆者は思っていたが、実際そうなってみるとやはり驚く。これで森内は来期竜王戦は2組降級が決定、現名人としてはやはり屈辱の事態だろう。まもなく始まる名人戦の挑戦者は言うまでもなく最強のチャレンジャ-羽生、体勢を立て直す時間は少ない。
ちなみに中原の次の相手は佐藤康光ニ冠、別の山では1回戦でなんと羽生ニ冠と谷川浩司九段の対戦も予定されており、こちらも負けた方が2組降級となる。これらの面々がみんな1組1回戦で負けたことになるのだから、最初の「情けない」という言い草は中原、森内にちと厳しすぎましたかな?(笑)
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