先発は気楽な稼業と来たもんだ?
牛、鳥と来てついに豚である。長年、自分達を食い荒らし続けた人類に対する鳥獣類の復讐・・・などと言うつもりはないが、「衛生」「除菌」そして「殺菌」へとエスカレートしていく一方の現代社会への痛烈なしっぺ返しの様相が濃い。怖い話である。
はて、今は何月だったっけな、と思わずカレンダーを見直してしまうような光景である。セリーグの貯金を独り占めする現在のジャイアンツではあるが、異常なまでに酷使されているリリーフ陣の頑張りの賜物であることは、言うまでもない。開幕してから、まだ1月も経っていないのに、繰り広げられている光景は、はやシーズン終盤、胸突き八丁の正念場といった風情である。当然の成り行きとして、早くもリリーフ陣は息切れ、崩壊の兆しが出て来ている、当たり前である。もっともこれは当方だけではなく、中日の岩瀬などは、土曜日に亀井にサヨナラホームランを打たれた時が7連投目だったそうな、とにかく異常である。
いつの頃からか、当たり前のように定着したプロ野球投手の「分業制」。野村克也に
「プロ野球の革命。」
とまで言わしめた「JFK」の登場で、それはいよいよ極まった感がある。
とにかく、6回までにリードを奪えば、あとは鉄壁の3投手がガッチリ締めて、相手に反撃の隙を与えない。9回を戦う間に、敵より1点でも多く、得点を挙げれば勝つことができるのが、野球というゲームのはずだったのに、それより3イニングも短い間に勝負をかけなくてはならなくなった相手チームは、いわばハンディキャップマッチを強いられているようなものである。後ろを充実させない限り、現代野球で勝利はない、他球団垂涎の的だった「JFK」は結果、各チームをリリーフ陣の充実に狂奔させることとなった。
ジャイアンツは06年西武の守護神豊田清を、更に08年には横浜のクローザーM・クルーンを迎え入れた。そして高橋尚成、上原浩治という先発投手を一時的に配置転換するという荒業もし、山口哲也、越智大祐という自前のセットアッパーも育て上げた。それだけではない、原監督が「鉄人」と呼ぶロングリリーフOKの西村健太朗が居て、ロッテ時代はJFKの向こうを張って、「YFK」トリオの一角を担ったベテラン藤田宗一を獲り、それでも飽き足らずに今シーズンは日本ハムからストッパーM中村を獲得した。豊田、クルーンそして中村と100セーブ以上を記録した投手が同時に在籍するという前代未聞の事態が現出し、かくして今やジャイアンツは、ほんの少し前まで、リリーフ陣の貧弱さに泣いていたのが嘘のような、分厚い布陣となった。
それが、今の快進撃の原動力になっているのは、もう繰り返すまでもないのだが、はて・・・なのである。現実には西村、中村は不調で機能せず、藤田も往年の力はなく、今やワンポイントが精一杯なのであるが、それでも山口、越智、豊田そしてクルーンの4人がフル回転して、チームを支えてきた。だが、その中で1番頑丈そうだったクローザーのクルーンが戦線離脱、他の3人も明らかに疲労困憊、おいおいまだ4月、シーズンは始まったばかりなのである。
ところで、現在のプロ野球は6連戦システムであり、従って先発投手は6枚いるというのが定説になっている。筆者もそれを当然のことと受け入れていたのだが、現在のジャイアンツの先発投手はS・グライシンガー、内海哲也、高橋尚成、東野峻、福田聡志と5人しかいない。当然足りないわけで、一昨日はグライシンガー、そして先々週は高橋が中4日でいって撃沈した。なんでこんな時期から先発を「酷使」しなくてならんのだと、昨年までなら原を批判したところなのだが、今年から趣旨替えした。きっかけは前監督堀内恒夫の著「バカでエースがつとまるか」を読んだことである。
内容は前のコラムでも引用した。その趣旨は
「今の先発投手はあまりにも優遇されていないか、いやだらしなさすぎないか。」
ということにつきる。かつてのエース達のように、完投するのが当たり前、場合によっては中1日で今度はリリーフなんていう時代に戻れと言っているのではない。メジャーの先発投手は中4日100球で回っている、ところがこちらでは中6日、それも100球あたりでフーフー言っている。5回を投げればまぁ試合は作ったとの評価で、あとはリリーフさんよろしくで風呂場へ直行なんて、あまりに甘すぎないだろうか。後の4回をなんとかすべく、リリーバー達は連日のように登板を余儀なくされ、たまに失敗すれば、それこそ罪人のように責めたてられるのである。これではリリーバー達もたまったものではないだろう。
火曜日に完投して、リリーフ陣を休ませたグライシンガーはともかく、内海、福田、東野の3人は若さの割りに降板が早すぎる。先発した以上、7回を投げるのは最低の義務と思って欲しい。いや、投げる意思はあるが、投げさせてもらえないという言い訳はむろん通用しない。自分のピッチングがだらしないという証明にしかならないのだから。
もっとも首脳陣にも我慢が足りないのも事実。先発が頼りないからリリーバーの負担が増えるのか、リリーバーに頼るから先発が育たないのかは、鶏が先か、卵が先かみたいな議論になってしまうのだが、JFKを擁した阪神もエース井川慶がいなくなったという事情もあるが、ロクな先発投手がいなかった。不安定な先発を見るに忍びず、自慢のリリーフ陣に手を伸ばしたくなるのは、わからないでもないが、ペナントレースが4月ひと月の短期決戦でもあるまいし、半年の長丁場をとても乗り切れない。昨年の阪神の驚くべき失速ぶりをまさか、見忘れたわけではあるまい。「明日はわが身」では困るのである。
ただでさえ手薄な先発陣から高橋が離脱。代わって野間口貴彦を上げるつもりだったようだが、思わぬアクシデントでいったん延期。何事もなければ、週の後半には戦列に加わってくることにはなろうが、更にゴンザレスあたりの補充も考えなくてはならないにしても、とにかく先発陣は踏ん張るしかない、中4日がたまに回ってきたくらいで悲鳴を上げているようでは困るぜ!と熱くゲキをとばしておこう。
にわかにふって湧いた形の千葉ロッテマリーンズの本拠地移転騒動は傍目から見ていて、よくわからない。ボビー・バレンタイン監督の今期限りの退任が、早々に決定しながらのシーズン突入という異例の事態がやはり、ごたつきの原因なのだろうか。チームもなにか歯車のかみ合わない戦いを繰り返している。ボビーファンとしては、事態が変な方向に進むことなく、彼に日本での最後のシーズンを飾って欲しいと願うばかりである。
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