試合は大敗を喫したようだが、神宮での対ヤクルト戦。ニッポン放送から懐かしい声が流れて来た。深沢弘アナ、おん年73歳、かつての同局野球実況の大エースである。筆者の子供の頃、印象としてはニッポン放送の実況は毎日この人がやっていたような気がする。その重厚な声、メリハリの利いた実況は子供心にほれぼれさせられた。この人の実況に憧れて、筆者は一時期、将来ニッポン放送に入って、実況アナウンサーになることを本気で夢見ていた。
かつ舌は多少、衰えた感があっても、しかしまぁほとんど現役時代にひけをとらないその実況ぶりは、「さすが名人」というしかなかった。相棒の解説者、関根潤三翁は齢80を過ぎて、尚も現役。こちらも全くかつてと変わらない独特の語り口は、往年の名コンビ健在と感動させられた。ニッポン放送55周年の記念企画だそうだが、もったいなぁ。是非これを機に、また実況席にたびたび座って欲しいものである。
前稿で自信満々に「一本道」と断言したら、恥ずかしながら、一夜にして覆されてしまった。まさかの麻生首相による異例の「解散宣言」、次週21日火曜に解散、来月30日に投開票だそうである。昨日は野党が提出した内閣不信任案が衆院で否決、問責決議案が参院で可決され、野党は以降の国会審議を完全にボイコット。儀式も終わり、いよいよ解散に向けてまっしぐら、かと思われたのだが・・・。
13日以降の自民党は大混乱に陥るというのは、予想されてはいた。その機先を制する為に、麻生は解散宣言をしたのだが、党内の混乱は一向に収まる様子がない。1955年の結党以来、ほんの一時期を除いて、54年間に渡ってこの国の政治を与党として担い続けて来た自由民主党。しかし、その終焉が近づきつつあるように見える今、彼らの断末魔とも見える言動の見苦しさは、敵ながらあまりにも情けない。
今日の自民党の不評のすべてとは言わないが、かなりの部分が、「自由民主党総裁=内閣総理大臣・麻生太郎」に因るものであることはもはや否定はできまい。昨年九月の就任以来、その言動はぶれにぶれ、迷走に迷走を重ねた。そもそも、当時の小沢民主党に一大決戦を挑むべく、自信満々に登場した麻生が、結局初志貫徹できないまま、解散を先送りしたことがもうすべてのボタンの掛け違いの始まりだったのである。今では信じられないことだが、発足当時麻生内閣の支持率は「40%もあった」のである。ところが、内閣発足直後のご祝儀相場を期待していた麻生はこの数字を「意外にはねなかった」と見て、ビビッてしまい、直後に起こったリーマンショックに端を発した世界不況への対策を「奇化として」総選挙から逃げ出してしまったのだ。もともと内閣発足、すぐ解散という方針のもとにすべての戦略、人事を組み立てていたのに、肝心の解散を先送りにした結果、全く辻褄が合わなくなり、それを国民に見透かされ、その時点で早くも信頼を失ってしまう羽目となってしまったのである。
それでも尚、神は麻生を見捨てなかった、いや検察という「切り札」があったと言うべきか。一夜にして小沢民主党は苦境に陥り
「みんなで南無阿弥陀仏を唱えて行くんですな。」
とある議員が捨て鉢に語るまでの状況に追い込まれた。しかし、にも関わらず、ここでも格好つけた麻生は解散に踏み切らなかった。
「今は政局より政策、百年に一度の経済危機に対する手当てが最優先。」
という解散に対する逃げ口上が、結局自分に跳ね返って、好機に身動きがとれなかったとも見える、かくして、絶好の反撃機はあたら過ぎ去ってしまった。あとは坂道を転げ落ちるがごとく・・・と言うしかない。麻生がなぜ、これほどまでに自らの手による解散にこだわるのか、どこに光明を見出しているのか、筆者には全く理解できない。しかし、解散権は間違いなく、今は麻生その人の手にあり、麻生が解散すると言ったら、今の憲法の下においては、何人もそれを阻止することはできない、はずなのであるが・・・。
戦後、現憲法下において、解散権を行使しようとして、ついに果たせなかった首相が2人いる。三木武夫と海部俊樹、奇しくもこの両名は師弟関係にある。もう1人、三木の後任だった福田赳夫も機をうかがっていたが、結局果たせず、逆に解散権の行使からひたすら逃げ回り、ついに内閣を放り出したのが赳夫の息子の福田康夫である。三木は党内の「三木おろし」に対抗すべく、解散に打って出ようとした。だが、20人の閣僚のうち、三木の方針を支持するのはわずかに5人、いったんは15閣僚を罷免して、強行突破の腹をくくったはずの三木だったが、土壇場で逡巡、結局は12月の任期満了選挙に追い込まれ、退陣した。のちに「自民党の一番暑い1日」と言われ、「党分裂の深淵をのぞいた」とも言われたこの時、三木が決断していたら、この時点で自民党は分裂、その後の政治の流れは間違いなく変わっていただろう。
「私は独裁者ではない。」
のちに三木は、言い訳のようにこう述懐したそうだ。筆者は三木という政治家を尊敬しているが、このことと片山、芦田内閣のたらい回しを推進したという2点については納得できないでいる。
三木や海部を反面教師にしたと言われるのが小泉純一郎で、無謀とも思われた郵政解散に踏み切ろうとした時、閣内にはイエスマンばかりを揃えてあった。それでも、4人の閣僚が当初反対(その1人に当時総務相だった現首相麻生もいた)を表明、小泉はその一人一人を個別に説得、ただ一人ノーを貫いた島村宜伸農水相の置いて行った辞表を突き返して、罷免して解散に突入、くだんの大勝利を収めた。
そして麻生は都議選翌日の13日に解散を断行しようとするも、周囲の反対で果たせず、代わりに解散予告をして、またも1週間先延ばしにした。それでも解散を宣言したことで、「麻生降ろし」に手ぐすね引いていた連中の機先を制することに、成功したかに見えた。
先延ばしにした最大の理由も、もはや聞き飽きた「公明党への配慮」。まぁ確かに都議選でのあの手堅い学会票を見れば、公明、学会のご機嫌をとりたくもなるのだろうが、「またしても所信を貫徹できなかった姿」を国民の前にさらし、また反麻生の連中に反撃の時間を与えてしまったことが、事態をいよいよ迷走させることになった。
14日の午前中にまず、飛び出したのが「古賀誠選挙対策委員長の辞意表明」。麻生の前任、福田康夫に自ら売り込み、党三役並みに格上げまでしてもらって就いたポジションを、いよいよ本番という時に、投げ出してしまったのだから、党内も国民も唖然の一言。永田町では「策士」で通る古賀だけに、真意をいろいろ憶測する向きもあるが、はっきり言って、この人の仕掛けが効を奏したのをあまり見た記憶がない。特に師とも後見人とも言われた野中広務が引退してからは、その傾向が顕著であり、結局のところ、小沢一郎同様、買い被られ過ぎというのが本当のところではないだろうか。尾辻秀久参院議員会長も辞意を漏らしたとも伝えられているが、この人に至っては、一応、一連の地方選敗退の責任を理由にしている古賀とも違って、なぜ今そんなことを言い出すのか、全く理解できず、要は党執行部にいるのが嫌になって、逃げ出しそうとしているという以外の思惑は感じられない。
こうして総裁以下執行部の威信はますます低下、もはや一種の無政府状態に陥り、反麻生陣営は、残された時間に最後の希望を託してクーデターに出ようとしている。都議選前からくすぶっていた「両院議員総会開催による党則の改正=総裁選の前倒し」である。都議選を始めとした地方選連敗の総括もせずに、解散になだれ込むとはなんたることという一応、理にかなっていそうな理屈で署名を集め、執行部に開催を迫っている。党則によると、党所属国会議員の1/3以上の要求で開催ができるそうで、このハードルは高くない。なにしろ、何度も書くが、とにかく彼らは生き残りに必死なのである。自民党がどうなろうと関係ない、まして麻生と心中する気などさらさらない、その為にはどんなことだってするのである。筆者が一本道と書いたのは、結局そんな彼らを抑えることなど絶対に誰にもできないと思ったからだ。
言っておくが、だからといって彼らの行動を筆者が支持し、または同情しているということでは全くない。ただ、どんなに止めようと、非難しようとそれは全くの無駄であると諦めているだけである。
火曜日、野党が提出した内閣不信任案を自公連立与党は「一致結束して」否決した。つまり、繰り返すが、近々国民の審判を受けることになる自民党の衆院議員は全員、麻生内閣を「信任した」のである。にも関わらず、その舌の根も乾かぬうちに、「麻生降ろし」とやらに奔走する輩がいる。そこを突っ込まれて
「首相と総裁は別ですから。」
とのたまった佐藤ゆかりなるバカ議員の言葉は、ここに大書しておきたい。この程度の奴を議員に押し上げた前回の郵政選挙の罪は、後世まで語り継ぐ必要がある。
議員総会でのクーデターが実り、総裁選が前倒しされることになったとしても、これも繰り返しになるが内閣総理大臣たる麻生の地位は変わらない。そして「しゃらくさい」とばかりに麻生が、そのまま解散に打って出たらどうするつもりなのだろう。それこそ渡りに船とばかりに、「反麻生」を旗印に分裂選挙を戦うつもりなのか、それともそんな暴挙が許されるはずがないとでも言うのか、クーデターと暴挙、どっちもどっちという気がするが。
その暴挙を防ぐ手段がなくもない。閣僚に造反させ、解散詔書への署名を拒否させるのである。現に与謝野馨や石破茂あたりが不穏な動きを見せているやにも聞く。しかし、いざという時、公明党出身の斎藤鉄夫環境相を唯一の例外として、麻生が首を切るのに、躊躇する閣僚がいるだろうか。あくまで理論上ではあるが、麻生が全閣僚を兼務して、解散を打つことだって可能であり、かつて海部が、閣僚の造反に合い、総辞職を選択した時に
「なんで海部さんはやらないんだ?反対する閣僚を全部罷免してやればいいんだよ。」
と周囲にもらしたと伝えられる麻生なのである。
いや、さすがにそこまで行けば無理筋と、麻生が恐れ入って退陣したとして、その後に彼らがどんなに立派な新総裁を選び出そうとしているかは知らないが、それで本当に今の流れを逆転できると信じているのだろうか?
今の自民党に対する逆風のかなりの原因を麻生その人が作り上げているのは事実だが、麻生1人の責任でないのも間違いない。国民は長年の、特に2007年夏の参院選以降の自民党の傲慢さ、破廉恥さ、不感症ぶりにほとほと嫌気が差しているのである。そこに来て、とどめを差すかのごとくのこのゴタゴタである。麻生がこのまま、なんとか押し切って21日(以降)に予定通り解散に打って出られたとしても、反麻生陣営の「麻生降ろし」が効を奏し、解散日程はこの期に及んでまたしても、いったん白紙、「めでたく」新総裁・首相誕生の上で改めてさぁ解散となったとしても、国民の自分達に対する不信感、嫌悪感を払拭できると信じているのであろうか?
細田博之は不信任案に対する反対討議で
「これは民主党による『鳩山疑惑献金隠し決議案』だ。」
となにやらボソボソと迫力なく言っていた。さらに昨日、なんとか「貨物検査特別措置法案」だけでも上げてくれと民主党に泣きついたが、一蹴され
「民主党は無責任だ、あんな政党に政権担当能力があるのか。」
とわめき散らしていたようだが、
「何言ってるんだ、あんた達、もともと月曜に解散するつもりだったんだろ。」
と冷笑されてジ・エンド。もはや、なにをやっても墓穴を掘っているだけである。
筆者はもはやこの流れは変わらない、いよいよ念願の政権交代が、目の前まで迫って来たと信じているが、しかし、しかしである。投開票日とされる8月30日までまだ「50日近くも」あるのである。まだなにがあるかわかったものではない、なにしろ相手はあの「ホップ・ステップ・肉離れ」をお家芸としている(!)民主党なのである。更には、投票するのは自民党に「お灸をすえる」ことまではやって来たが「鉄槌をくらわす」ことからは、ひたすら逃げ回って来た日本国民なのである。今度の衆院選挙はやっぱりその時、運の良かった政党が勝つのである。
しかし、今の自民党はその最後の、それは奇跡的なものかもしれないが、そのわずかな可能性すら、自らの手で捨て去ろうとしているとしか見えない。今の自民党の状況を見て、自民党に対する好感度が高まったり、信頼感が増す人がいるとしたら、その人は相当変わり者か、相当な民主党嫌いか、どちらかだろう。今や、自民党の面々には、今の自分達が、国民の目に、どんな風に映っているのか、そんなことすら、冷静に判断できる人物もいないのだろう。このままなら、民主党はただ、相手を嘲笑ったまま、易々と政権を手に入れられるだろう。
筆者は「正当なる政権交代」が今の日本の為にはどうしても必要だと思い、その為には、何度も裏切られながらも民主党という政党を応援して来た。その思いがついに結実する日が来る、それは本当に喜ばしい。そして、長年、政権、権力にあぐらをかき、日本の政治を停滞させて来た自由民主党なる政党がついに崩壊しようが、分裂しようが全くご勝手になさればいいと思う。だが、自民党にも戦後日本の繁栄を築きあげてきた矜持と王者としての誇りはないのか?いや、そんなカッコいいセリフを敵に投げ掛けられる余裕なんて、民主党には所詮はないんだけどね・・・。
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