歴史的1日
「日本の未来は明るい。」
今日の午前中、自らが任命した17名の閣僚から辞表を取りまとめ、自らも前内閣総理大臣そして前自由民主党総裁となった麻生太郎は、退任する首相としては異例の「サヨナラ会見」を行い、国民に対する最後のメッセージと称して、こんな言葉を残して、総理官邸を去って行った。花束を贈られ、黒塗りの車に乗り込んだ麻生は、見送りに集まった国民に車内から笑顔で手を振り、とうとう最後には車から降りて、歓声に応えていた。最後までノー天気な男だと、思わず苦笑いが浮かんでしまったが、しかしこれからの自民党にとって必要なのは、実はこのノー天気さだったのかもしれない。皮肉にとられてしまうかもしれないが、今更ながら麻生が惜しくなって来た。彼は明らかに時運に恵まれなかった、出番を間違えてしまった。これもまた運命と言うしかない。
戦後の首相としては唯一の復へき(首相への返り咲き)を果たし、昭和20年代に長期政権を誇った吉田茂を飽くなき挑戦の末、引きずり下ろした鳩山一郎。そしてそれから55年後に両者の孫同士で繰り返された因縁は既にいろんなところで触れられてはいるが、とにかく16年ぶりに誕生した「非自民政権」、そして1955年の自民党結党以来、初めて自民党以外の政党が衆参両院で第1党として堂々と政権の座に就き、内閣を発足させた。8月30日同様、本日9月16日もまた、歴史に残る1日となったことは間違いない。
国会での指名を受け、正式に内閣総理大臣となり、記者会見に臨んだ鳩山由紀夫の表情は、今までとは一変、厳しいというか引き締まったものになっていた。凛々しいと言ってもいいかもしれない。その語り口も今までのなんともたどたどしいというか、ぎこちなさというものが、とりあえず影を潜め、まっすぐに我々国民に訴えかけようという姿勢にあふれていたように思う。鳩山に1番欠けていたと見える「重厚さ」、もちろんそれが首相になった途端に、急に身に付くものだとは思っていないが、「地位が人を変える」という言葉を思い出させてもらった。
新官房長官平野博文によって発表された鳩山新内閣の布陣、これについては人によって様々な評価があるのだろうが、今の民社国3党連立内閣のスタッフとしてはまぁ妥当な人選なのではないかと筆者は思っている。
菅直人副総理兼国家戦略室担当相は当初官房長官説もあり、本人も不満を抱いた時期もあったやに聞くが「雀100まで踊り忘れず」という言葉もある通り、市民運動家から政界に転じ、ついに内閣のNO2にまで上り詰めたこの人物は一言で言えば「目立ちたがり屋」。これは決して政治家菅に対する悪口ばかりではないつもりだが、しかし「イラ菅」の異名を取り、また破壊、攻撃を得意技とする菅がいわゆる「女房役」「調整役」とされる官房長官に適任とはどうしても思えないが、鳩山内閣最大の売りである「脱官僚依存」の最前線に立つのは、やはり菅が最適任ではないか(もっとも平野官房長官っていうのも華がないねぇ。華やかさが、官房長官の最大の適性資格ではないのだろうが「内閣のスポークスマン」である以上、イメージ戦略っていうのは無視はできない。町村信孝、河村建夫と2代続けて見てるだけで、気が滅入るような長官が続いただけになんとかならなかったのかなぁとは率直に思う)。
長妻昭厚生労働相は今内閣の最大の目玉人事。本人が熱望して、他ポストから入れ替わっての就任と聞くが、これは鳩山の決断だったと思う。長妻の熱血が空回りして、役所の中で浮き上がって、かえって逆効果となるとも懸念もあったようだが、それなら仰々しく「脱官僚依存」なんてお題目は最初からうたわない方がいい。4年前の大敗からの反転攻勢の大きなきっかけを作ったのは紛れもなく長妻、彼が今日の民主党政権誕生に果たした役割の大きさを思い、また彼を先頭に立てて自公政権を攻め立て続けながら、いざ政権を獲ったら、年金担当は別の人では、国民の不信を買おう。原口一博総務相と並んで、内閣のメリハリをつける存在になっていくことを期待したい。
藤井裕久財務相は久々に見た「内閣の重鎮」と呼ばれるにふさわしい存在ではないか。自民離党以来の仲だったはずの小沢一郎の横やりから入閣が危ぶまれた時期もあったようだが、鳩山が初心を貫いたのはいろいろな意味でよかったと思う。就任記者会見でも「識見」というものを政治家から感じたのも随分久しぶりのような気がした。引退予定を鳩山が、引き留めたそうだが、どうやら正解だったようだ。
秘密のアッコちゃんは全部表に出してもらうと飄々と語っていた仙谷由人行政刷新担当相は、小沢一郎に面と向かって苦言を呈する度胸を生かして、官僚機構に切り込めるか?久々の檜舞台復帰の亀井静香郵政・金融担当相はいろいろな意味で、今後台風の目となっていくだろう。
その亀井が当初就くと伝えられた防衛相。ここが民主党にとって鬼門のポストであることは周知の事実で、これを他党の亀井に丸投げはいかがなものとは思っていたら、とりあえずそれが避けられたのはまずはめでたいことだが、代わり?に登場の北沢俊美とは何者か?他にも千葉景子法相、小沢鋭仁環境相、川端達夫文部科学相あたりは逆に先行きやや不安な気配である。
当たり前のことかもしれないが、新閣僚は口ぐちに「マニュフェストの誠実な実施」と述べていたのは好感は持った。また、新閣僚が官僚の入れ知恵なしに、自らの言葉で就任会見に臨んだのも、国民の目から見れば清新に映ったのではないか。それなりの個性的なスターを揃えた以上、後問われるのは実行力そして、彼らを束ねる鳩山の首相としてのリーダーシップである。
鳩山由紀夫首相の誕生は1つの歴史であり、また感慨深い出来事ではあった。しかし感傷にひたれるのは今日まで、時間も懸案も待ってはくれない。もはや、日々がイザッ勝負!である。
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