駆け抜けて行く夏
21日の金曜から、1週間の夏季休暇をいただいている。休暇の過ぎて行くは今年の夏のようにあっという間、残りもう1日となってしまった。
不況の波は我が家にも例外なく押し寄せて来ている。手当、残業のカットで給料、ボーナスは目に見えて減っていき、逆に子供の成長に合わせて、出費は右肩上がり。今年はついに、恒例の夏の家族旅行を断念するという結論に達し、双方の実家に順番に転がり込んで「たかりの夏」でも過ごすかと、半ばやけっぱちで妻とも話していたのだが、その空気を一変させたのが、長男の無邪気な一言
「ねぇ、今年はどこに行くの?僕、山で虫取りがしたい。」
筆者にとってはほとんど唯一無二の趣味である旅行、これを止めることには実は内心、忸怩たるものがあったのだが、結局この子供の言葉の尻馬に乗り、筆者の両親を孫で釣り、同行者という名のスポンサーに仕立て、とにもかくにも決行にこぎつけたのは、休暇開始のわずか3日前のことであった。
23日の日曜から一泊、目的地は千葉白浜の「グランドホテル太陽」である。息子の虫取りの希望には添えなかったが、海水浴ならまぁ納得してくれるだろう。宿泊地には「いい温泉」をまず求める筆者として、本来あり得ないチョイスなのだが、一泊二食付き9800円は今の我が家にとっては魅力、「ぜいたくは敵」なのである。
天気はまぁまぁ、実家を10時には出ようと思っていたが、結局はほぼ1時間遅れのスタートは、妻を唯一の例外とした極度の朝弱集団である我が一族らしい。道路は順調、が海ぼたるは満車、入口が閉鎖されているのを筆者は初めて見た。通行料はETCを持っていると現在1000円らしいが、夏休みとあいまって、この盛況らしい。もっとも当方はETC未搭載でしっかり正規料金を取られるのがいまいましいが、生産が追いつかず、品薄状態が続いているETCも、近々無用の長物と化すやもしれず、ざまぁみろと思うのは、所詮負け惜しみ、遠吠えの類に過ぎない。
湾岸道路から館山道に入る。筆者の車に搭載されている5年前のカーナビでは未完成の部分も既に開通済で、1車線とはいえ、なかなか快適なドライブである。確かに海岸沿いを走る心地よさはなくなったが、半島特有のやりきれない渋滞から解放されたメリットの方が大きいだろう。昼食休憩をとって、チェックイン可能の3時ちょうどに宿に到着した。
太陽には、平成元年に今は亡き祖父母のお伴で訪れて以来、丸20年ぶりである。なかなかいい宿だったという記憶があったが、最近リニューアルしたとかで、なかなか小ぎれい。筆者達は6Fに泊まったのだが、部屋の窓に広がる一面の海の景色はやはり、圧巻であった。子供達を遊ばせる海岸にも無論、事欠かない。
夕食はバイキング(夏場のみらしい、前回泊まった時は確か部屋食だった)。値段からもほとんど期待していなかったのだが、これがどうしてどうして、嬉しい誤算であった。天麩羅は揚げたてがふんだんに振る舞われ、肉も焼き立て、刺身、寿司の類はもちろんのこと、マグロのカマまで用意してあったのには驚かされた。筆者が口にした中では、ソバだけが倒れそうなくらいまずかったが、あとはデザートも含めていけた。ちなみに当然朝もバイキング、こちらはまぁありふれた内容だったが、それでも刺身があったのは海の宿ならではだろうか、特にイカの柔らかさは絶品だった。
夕食後は、ジャンケン大会、貝殻のストラップ作りといったイベントも用意され(これも夏休みだけらしいが)、後はお楽しみの風呂・・・まぁこれは、それぞれの好みとなる。千葉で筆者の望む「いい風呂」に巡り合うことは、まず不可能なのだから割り切るしかない。
翌朝、目覚めたら予想もしなかった雨だったのには驚いたが、それも出発時には上がり、この日の目的地は「鴨川シーワールド」。祖母の実家がこちらだったこともあり、子供の頃は何度か訪れたことがあったが、久々である。かつて、この辺のレジャー施設としてシーワールドと張り合う存在だった行川アイランドは既になく、ディズニーランドは別格としても、千葉県の施設としては1人勝ちとは聞いていたが、入口から広がる海、さまざまなアトラクション、夏休みにふさわしい混雑ぶりも納得できた。老若男女、楽しめる施設であろう。
2日間の短い旅ではあったが、千葉の気候、自然、食べ物を十分楽しめた。千葉はいい所、今更ながらそう思わされた旅であったが、1つだけ不快なことがあった。初日の昼食を野島崎灯台近くのある海鮮料理屋で摂った。料理自体は決してまずくはなかった、いやうまかったのだが、子供の食べていた飯か味噌汁のどちらかから、なんと人の差し歯が出てきたのだ。全く信じられないことだが、事実である。知らずに口に運んだ子供が
「これ何?」
と口から出して、それを見せた時、筆者達は正直言葉を失った。すぐさま店の人間を呼んで抗議したが、なんとも誠意の感じられない対応に怒りが増幅する。店側は断固否定するが、要は他の客の食べ残しを流用しているとしか考えられなく、どこの誰ともわからない人間の口から出た物が、幼い子供の口に入ってしまったという事実は大袈裟でなく、背筋が寒くなった。普段は大人しいが、こと子供のことになると人が変わる妻の猛抗議に、しぶしぶ店主(らしき人物)が頭を下げたが、ただにするからもういいでしょ的対応には、怒りを通り越してあきれてしまった。全く食物を扱う資格すら感じさせないこの店の実名を本当ははっきりここで書きたいくらいだが、とりあえずは我慢しておく。ただ、商売とは厳しいものであるということくらいは知っているつもりだが、儲けの為には、なんでもありと言わんばかりのこの店の姿勢。こういう店が生き残ることがないように、我々消費者はかしこくならなければならないと、強く思った出来事であった。
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